国内最大のアニメイベント「AnimeJapan 2019」との付き合い方

2019.04.05

 総来場者数146,500人と発表された「AnimeJapan 2019」が盛況のうちに閉幕した。さまざまな人やコンテンツやが集うこの場で、企業担当者は、何を見て、どう活用するべきか。期間中の現場レポートとともにお伝えする。

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 国内最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2019」が、3月23日から26日まで、東京ビッグサイトで開催された。過去最大規模の163の出展企業が東1ホールから8ホールまでを埋め、華やかさを演出していた。
 2019年に目立ったのは、業績好調を伝えられる企業の巨大ブース。アニプレックスを中心とするソニーミュージックグループは、「アニプレックス」「Fate/Grand Order」「SAKURA MUSIC」「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ」……といくつもの大型ブースを並べ目を惹いた。TVアニメ/劇場映画でビジネスを拡大展開する東宝(TOHO Animation)も存在感を発揮する。
 2019年に特に目についたのは、XFLAG(ミクシィ)やディライトワークス、KLab、ブシロード、DMMといったゲーム会社勢。アニメ業界にスマホアプリゲームが欠かせなくなっていることを感じさせるのに十分だ。

 

 新たな勢力では海外配信会社も目が離せない。今年2年目のNetflixはブース内にふたつのステージを設けて、30人を越える人気声優をゲストに招いた。中国のビリビリは、会場の自社ステージイベントを中国に生配信する。AnimeJapan 2019は、最新のアニメビジネスの状況を反映する。

 

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 ■アニメビジネス関係者が集まるビジネスデイとは?
 華やかなステージや最新作をアピールする出展ブースが注目されたAnimeJapan 2019だが、ファン向けと異なった役割もある。23日(土)、24日(日)のパブリックデイの終了後、25日(月)、26日(火)の2日間設けられたビジネスデイである。
 ビジネスデイの役割は、アニメのビジネス創出だ。会場はパブリックデイと同じ東京ビッグサイトだが、会議場棟の1階と6階。こちらも企業ブースを設けるが1小間数メートル四方に、何枚かのポスターと小さなモニター、そしてミーティングのための机と椅子が置かれるだけとずっと控えめだ。来場者の目的が商談なので、それで十分なのである。
 それでも出展企業は約60社と少なくない。さらに忘れていけないのは、ブースを設けずに、ミーティングだけを実施する企業も少なくないことだ。ビジネスデイの全容は見えにくいが、来場者は2日間で3000名超と、アニメビジネス関係者だけと考えると、かなりの数である。

 

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ビジネスデイに設置された企業ブース

 

 ■ビジネスデイの3つの目的
 ただアニメビジネスと言っても、その種類は様々だ。アニメ以外の企業、あるいは新興企業からAnimeJapanビジネスデイをどう活用すればいいか分からないとの声もく聞く。ビジネスパートナー探しにいったけれど、誰に何を話してよいか分からない。一度いったけれども、成果がなかったからその後は行っていないという企業もある。少し勿体ない話である。
 たぶんAnimeJapanビジネスデイの役割は、うまく説明されていない。それは訪れる人によってイベントの役割がいくつかに分かれているからだ。その役割は大きく分けて次の3つになる。

 


1) 日本のアニメ企業と海外企業の商談の場
2) 日本のアニメ企業と国内企業・団体のビジネスマッチング
3) 海外のアニメイベント事業者と日本企業のマッチング

 

 東京国際アニメフェアの時代から 、1)の海外ビジネスの商談機能はとりわけ大きい。そこでは海外企業に向けてアニメ番組販売、ライセンス販売がされる。秋の東京国際映画祭併催マーケットTIFFCOMと同様で、この時期に合わせて来日する海外の映像関係者も多い。
 2019年は同じ会場でJETROによる「AJ×JETRO アニメコンテンツ商談会」、また映像産業振興機構も「国際アニメーションプロデューサーピッチトレーニングプログラム受講者による英語ピッチセッション」も実施していた。
 ここ数年は長年日本アニメを買い続けてきたアメリカやヨーロッパの企業だけでなく、配信ビジネスが話題になった中国企業の参加急増が注目されてきた。しかし2019年は国内の規制導入で勢いの衰えを感じた。日本での製作もする絵梦、3Dアニメ製作のKaca entertainment、イベント運営の北京動卡動優文化傳媒有限公司など、中国ビジネスの方向性に変化が感じられた。
 中国に替わって目立って増えたと会場から指摘されたのが、中近東や東南アジア、ラテンアメリカなどの新興国である。ブース出展をしたサウジアラビアのマンガプロダクションズがその代表。アニメビジネスはこれまでより海外に広がっている。

 


■アニメビジネスのタネを見つけたい一般企業はどうする?
 もうひとつビジネスデイが目指すのが、国内企業同士のマッチングである。アニメ企業とアニメを活用したい一般企業をつなげる場所だ。
 正直に言えば、国際見本市色が濃いAnimeJapanではこの面ではまだまだ使い勝手が悪い。大きな企業ブースでも、海外担当者はいるけれども、国内ライセンス担当者がいないケースは少なくない。
 それでも今年は、アニメのキャラクターの印鑑「痛印」を展開するTOSYO、アニメとファッションの融合を掲げるR4G、商品企画のエーワークス、アニメ・ゲームのコンセプトルームをプロデュースするSO‐ZOなど商品開発側がその技術・アイディアを披露する出展が目を惹いた。ライセンス活用の提案は、AnimeJapanとアニメビジネスの今後の可能性も示してそうだ。

 

 会場でビジネスの相手を効率よく見つけるには、毎年設けられている「アニメビジネスコンシェルジュ」を活用する方法がある。アニメビジネスの問い合わせ窓口として、とりわけアニメビジネス初心者の疑問に答える。特に企業窓口の紹介もするのは、有難い機能だろう。アニメはどの企業がどの作品の権利を持っているかが判り難い。例え会場に出展がなくとも、それが分かるだけでも活用価値は高い。

 

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アニメビジネスコンシェルジュ。さまざまな企業担当者が訪れる。

 

 1階会場の正面に設置された「アニメ作品・キャラクター紹介パネル」も似た役割を持っている。ビジネスエリア出展社から集めたキャラクターを、作品情報と共に一覧にして掲出する。こちらも権利窓口を知る手がかりになる。

 

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アニメ作品・キャラクター紹介パネル

 

 もうひとつ意外に知られていないAnimeJapanの隠れた機能が、海外のイベントオーガナイザーと日本企業マッチングだ。いま世界各地で日本アニメをテーマにした大型イベントが次々に開催されている。時には何十万人も参加するそうしたイベントは、日本カルチャー好きにアピールする場でぴったりだ。しかし参加の仕方は一般企業には判り難い。
 一方でそうしたイベントは、常に新しい日本企業の参加を求めている。そこでAnimeJapanが出会いの場となる。今年はフランスのジャパンエキスポ、アジア地域のC3 Anime Festival Asia、さらに北米・英語圏に強いリードPOPがブース出展をしていた。今年はソニー・ミュージックエンタテインメントが新たに韓国のAnime X Game Festival in Seoul、中国のアニメ・音楽イベントBICAF2019 の出展を案内していた。

 

 AnimeJapanのビジネスは、人とのネットワークや、事前のアポイントメントなど、目に見えない部分も少なくない。それだけによく分からないと思われがちだ。
 しかし自社がビジネスに何を求めているのか、それを知って訪れれば、短時間で意外な力を発揮するはずだ。

 

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■AnimeJapan 2019 開催実績
催事名称 : AnimeJapan 2019
会場 : 東京ビッグサイト (〒135-0063 東京都江東区有明 3-10-1)
東展示棟 1-8 ホール [メインエリア]
会議棟 6F&1F [ビジネスエリア]
メインエリア会期 : 2019 年 3 月 23 日(土)・24 日(日) 10:00~17:00 ※最終入場 16:30
ビジネスエリア会期: 2019 年 3 月 25 日(月) 10:00~19:00 ※最終入場 18:30
3 月 26 日(火) 10:00~18:00 ※最終入場 17:30

 


特別協賛 : Fate/Grand Order
協賛 : LIVE DAM STADIUM/TOHO animation STORE/株式会社 SANKYO/ d アニメストア
後援 : 経済産業省/一般社団法人 日本動画協会/コミック出版社の会
主催 : 一般社団法人アニメジャパン
展開内容 : パブリックデイ:出展ブース(展示・物販)/AJ“ROCK”ステージ/主催企画など展開
ビジネスデイ:出展ブース/商談
総来場者数 :146,500 人(見込み)
入場券 : 事前販売 中学生以上:1,800 円(税込)/小学生以下:無料
当日券 中学生以上:2,200 円(税込)/小学生以下:無料

 


公式サイト : https://www.anime-japan.jp/
公式 Twitter : @animejapan_aj (ハッシュタグ:#animejapan)
事務局 : AnimeJapan 運営事務局 [株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ]

 

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取材・数土 直志 (ジャーナリスト)
メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆をする。証券会社を経て、2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、国内有数のサイトに育てた。2016年7月に「アニメ! アニメ!」を離れる。代表的な仕事に「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』(星海社新書)。