Tokyo Otaku Modeとアニメプロジェクト『CHIKA☆CHIKA IDOL』がクラウドファンディングの新ビジネスモデルに挑戦

2016.02.08

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 オリジナルCGアニメプロジェクト『CHIKA☆CHIKA IDOL』を展開するア二メ制作会社シンフォニウム株式会社が、Tokyo Otaku Modeの支援を受けて、製作委員会を用いない、新しいアニメ作りにチャレンジしようとしています。

 

【クールジャパン機構から15億円調達のTOM、強みを生かしてクラウドファンディング支援へ】

 

  Tokyo Otaku Mode Inc.(以下、TOM)が5日、ア二メ制作会社シンフォニウム株式会社(以下、シンフォニウム)のクラウドファンディングによるオリジナルCGアニメプロジェクト『CHIKA☆CHIKA IDOL』の支援を開始したことを発表しました。

 

 同プロジェクトの監督は、「とある」シリーズで知られる錦織博。オリジナルCGアニメの公開を目指し、日本では2月5日から「Makuake」で、英語圏では「Kickstarter(近日開始予定)」でプロジェクトがスタートします。

 

 今回プロジェクトをサポートするTOMは、日本国外を対象に、アニメや漫画、ゲームなど日本のポップカルチャーにまつわるEコマース事業やニュースページを展開するWebサイト「Tokyo Otaku Mode」を運営するスタートアップ企業です。現在、英語で展開するFacebookの公式ページでは、日本国外を中心に1840万の「いいね!」を獲得し、2014年9月には、株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)から3年間で最大約15億円の資金調達を行うことで合意して話題を集めました。

 

 そんなTOMが新しく始めたのが、クラウドファンディングにおける資金調達のサポートです。米国発のクラウンファンディングサイト「Kickstarter」などでは、英語圏のネットユーザーからの資金調達を期待できる一方、海外の銀行口座の開設や事業紹介ページの作成、質疑応答、リワードの発送などを全て英語を介して行う必要が生じます。そこで日本国外への配送・情報発信を展開するTOMが、強みを生かしてシンフォニウムのクラウドファンディングの支援するに至りました。

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 TOMは今回にプロジェクトに関して、「クラウドファンディングは制作側とファンがダイレクトにつながるエコシステムであり、TOMのミッションと合致すること、また現状のクラウドファンディングの課題を解決する機能を備えている」とコメントしています。

 

【注目点: 製作委員会方式を用いないクリエイター主導の新ビジネスモデル】

 

 クラウドファンディングを通じてオリジナルCGアニメの世界公開を目指すシンフォ二ウム。脚光を集める理由の一つは、監督の錦織氏、作品の原作者である本条靖竹らクリエイター主導のプロジェクトであることです。

 

 過去にも多くのアニメプロジェクトが「Kickstarter」を通じて資金調達にチャレンジしてきました。なかでも成功を収めたのが、アニメ制作会社「トリガー」が企画・したアニメ「リトルウィッチアカデミア」シリーズです。2013年に『リトルウィッチアカデミア2』の15万ドルの制作費を募り、スタートからわずか5時間で目標を達成。最終的に目標額の4倍にあたる60万ドルを調達しています。また2014年にも、イシイジロウ氏を『Under the Dog』が当時世界最高の87万8028ドルの資金調達に成功しました。

 

 今回の『CHIKA☆CHIKA IDOL』プロジェクトがこれら成功例と異なるのは、既存のアニメーションスタジオや各種企業がプロジェクトに関わっていないこと。本条氏が代表取締役、錦織氏が取締役に就任し、作り手主導の企業としてシンフォニウムを立ち上げました。本条氏はインタビューを通じてこう語っています。

 

この作品のスタッフは、現在フリーランスも含めてほぼ100%クリエイターで構成しています。単純に、私たちクリエイターがお客様にとって理想的な展開を考えたときに、それがごく自然な形だと思ったんです。僕ら二人だけで資本を出資したゼロベースの会社ですが、海外展開、多様なメディア展開を含め、自分たちの見える範囲できちんとコンテンツの管理をして、クオリティーを維持していきたいのです。

(インタビュー記事「アニメ業界に新時代を 2人のアニメ馬鹿が『CHIKA☆CHIKA IDOL』プロジェクトに込めたメッセージ」より本条氏コメントを抜粋)

 

 過去のアニメ制作は、制作会社と広告代理店(またはおもちゃメーカーなど)が共同出資してアニメを作るパターンが主流でした。しかしこの方法は、作品が興行的に失敗した際に各社が負う負債のリスクが大きいというデメリットがありました。そこで生まれたのが「製作委員会方式」です。アニメ映画の『風の谷のナウシカ』(1984)や『AKIRA』(1988)で採用されて以来、より多く企業が出資して投資リスクを分散する解決策として、今日まで多くのアニメ作りで採用されてきました。

 

 しかしアニメの世界展開が一般的になってきた現在、製作委員会方式のデメリットが強調されるようになりました。それは、委員会に参加した企業間の版権問題が複雑で、作品やグッズの海外展開の際に動きが取りづらいという課題が浮き彫りになったことです。

 

 また、製作委員会方式では、TV放映・グッズ展開・映画の興行収入などにまつわる利益が、各権利(テレビ放映権、劇場上映、ネット配信、キャラクター版権など)をもつ企業に分配されます。

 

 委員会内で作品権利を分配され、アニメ制作会社は主に、DVDやBlu-rayディスクの収益を頼りにしている分、制作現場のクリエイターが低賃金問題で揺れています。2015年秋には、アニメ制作会社「マングローブ」も事業停止に追い込まれました。

 

 こうした状況下でシンフォニウムは、現代のアニメ制作・展開にまつわる問題を解消しながらリスクを分散する方法として、クラウンファンディングによる新しいビジネスモデルに挑戦しようとしています。

 

支援者が作品とクリエイターを支援して、お金を払うことに喜びを感じられる仕組み。このモデルがお金と物を交換するモデルの次に来るビジネスモデルではないかと思っています。

 

アニメ業界内外の人に、製作資金の集め方、作品の共有の仕方は自分たちの手でゼロから構築できるんだと示したいです。

 

(インタビュー記事「アニメ業界に新時代を 2人のアニメ馬鹿が『CHIKA☆CHIKA IDOL』プロジェクトに込めたメッセージ」より錦織氏コメントをそれぞれ抜粋)

 

 シンフォニウムは製作委員会を設けない分、各種権利をシンフォニウムがほぼ全て保有することになるでしょう。作品がヒットしてミックスメディア展開・商品展開へ派生した際に制作会社が得る利益は、過去に例がないほど大きくなる可能性を秘めています。そして優秀なクリエイターに還元し、収益を新しい作品の制作資金に充てて……と次の展開へ繋げることもできるでしょう。

 

 アニメ業界から新しいビジネスモデルとして脚光を集める『CHIKA☆CHIKA IDOL』プロジェクト。最終的にどんな未来が待っているか注目です。

 
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▪参考リンク
■CHIKA☆CHIKA IDOL
http://chikadol.com/ja/

■Tokyo Otaku Mode
http://otakumode.com/