4月29日から6月28日まで、東京・六本木ヒルズ森タワー52階展望台 東京シティビューにて、『スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン』が開催中です。世界中から選りすぐられたアーティストによる『スター・ウォーズ』をモチーフとしたアート作品を中心に、撮影用の衣装や小道具など約100点を展示。年末の新作公開に向けて盛り上がる展覧会の様子をレポートします。
2015年12月に、10年ぶりとなる待望の新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開を控え、再び『スター・ウォーズ』コンテンツが大きな盛り上がりを見せています。
その先駆けとして開催されている展覧会が『スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン』です。この展覧会は「ビジョン」をテーマに、ルーカス・ミュージアム・ナラティヴ・アート所蔵の『スター・ウォーズ』シリーズのベースとなったコンセプトアート、実際に撮影に使用された衣装や小道具を展示。さらに、原作者であるジョージ・ルーカスが世界から選りすぐったアーティストに依頼して『スター・ウォーズ』からインスピレーションを得て、独自解釈で描いたアート作品を合わせて見せることで、「ビジョン」という視点から『スター・ウォーズ』の魅力に迫る展示が行われています。
では、早速会場の様子を紹介していきましょう。会場はエントランスと6つのセクションに分かれています。
入り口では、巨大なデス・スターの模型と等身大のダース・ベイダーがお迎え。壁面に並ぶストーム・トルーパーは特定の時間になると光と音による演出を楽しむことができます。
そして、最初のセクションとなるのが「スター・ウォーズの原点」。ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を構想する際に参考にした、神話学、スペース・オペラを描いたコミックス『フラッシュ・ゴードン』、黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』の登場人物設定など、作品の原点となった出展資料が展示されています。
続くセクションである「フォースの光と闇」は、『スター・ウォーズ』シリーズを通して描かれる大きなテーマである、不思議なエネルギーである「フォース」にスポットを当てています。セクションをフォースの光であるジェダイと闇でありシスを対比する形で展示し、それぞれの騎士たちが使ったライト・セイバーが配置されています。
3つめのセクションは「戦いと兵器」。このセクションでは『スター・ウォーズ』の劇中で描かれた戦いと兵器にスポットを当てた展示となっています。精巧に作られたミニチュアの展示を中心に、劇中映像とリンクさせることで、『スター・ウォーズ』シリーズ6作品で描かれてきた、壮大な戦闘シーンとメカニックの存在感を楽しむことができます。
「サーガと運命の肖像」と名付けられた4つめのセクションには、ルーク・スカイウォーカーやダース・ベイダーをはじめとした、主要登場人物の紹介を実際に撮影に使用された衣装と合わせて展示。合わせて、劇中小道具やコンセプトアートなども配置されており、撮影時のことを想起させるような「本物」の空気感を感じることができます。
その奥にある5つ目のセクションは、「銀河と生態系」。『スター・ウォーズ』に登場するさまざまな星に生息する生命体にスポットを当てたものとなっています。チューバッカやイォークなど、星によって異なる生態系で生まれた生物たちの姿を撮影に使用した衣装を中心に展示しており、独特の質感なども間近で観ることができます。
そして最後のセクションとなるのが、「ドロイドが見たサーガ」。『スター・ウォーズ』シリーズ全作に通して唯一登場しているR2-D2とC-3POの2体のドロイドにスポットを当て、彼らが6作に渡る壮大な物語をふり返る映像に加え、実際に撮影に使われた衣装も展示されています。
各セクションに連動する形で、壁面にはアート作品も同時に展示されており、中にはSFビジュアル・デザインの第一人者であるシド・ミードや日本を代表するイラストレーターである天野喜考らの作品が飾られています。外に広がる東京のパノラマと壁面を埋めるスター・ウォーズアートの融合によって、これまでの行われてきたスター・ウォーズの展示会とは異なる趣を楽しむことができるはずです。
また、オフィシャルショップも併設されており、東京会場限定のイォークぬいぐるみをはじめ、多数のコラボグッズを販売。また、六本木ヒルズ内の各店舗でも『スター・ウォーズ展』開催記念オリジナル商品を限定発売するなど、六本木ヒルズ全館と連動する取り組みも注目です。
『スター・ウォーズ』は、1978年に公開されたシリーズ第1作目『スター・ウォーズ 新たなる希望』からはじまり、今年で誕生から37年が経過します。
それまで見たことのないような壮大なスペース・オペラ的な世界観を、当時の最新VFXで描いたことにより、興行記録を塗り替える世界的な大ヒットを記録し、その影響力は「映画の歴史を変えた」とも言われました。事実、その後の特殊撮影を用いた映画表現は、大きく変わることになります。作品のヒットにより、続いて1980年に『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』、1983年に『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』と3部作が公開されました。
1999年には、16年ぶりとなる形で、先に公開された3部作の過去のエピソードとなるジェダイの崩壊とダース・ベイダーの誕生までを描く新たな3部作がスタート。ここで旧来からファン層に加え、新たなファン層を獲得して現在に至ります。
『スター・ウォーズ』の世界観は、劇中で描かれる部分だけでなく、さまざまな裏設定が存在しており、そうした見えない要素を含み、SF的見地から作品を楽しむディープなファンをたくさん生みだしてきました。その一方で、西部劇や冒険活劇、日本の時代劇の影響を受けて生まれた魅力あるキャラクターにも多くのファンがついており、その層が広いのも特徴です。そのファン活動の規模も大きく、アメリカ本国では「スター・ウォーズセレブレーション」と呼ばれる大規模なファンイベントが毎年行われるほど人気を呼んでいます。
もちろん、日本にも古くからの作品ファンも多く、現在でも数多くのスター・ウォーズグッズが発売されています。
旧3部作に関しては約40年前の作品ということもあり、既にクラシックの域に達していますが、ダース・ベイダーをはじめとする印象深いキャラクター像は、映画を見ていなくてもその存在を知っているというポップアイコン的な地位を獲得しており、作品を心から愛するディープなファンから、気軽に触れているライトなファンを取り込み、現在でも大きな影響力を持ち続けています。
そのためか、近年はガチガチのリアルなフィギュアや模型のリリースだけでなく、キャラクターをデフォルメした商品やポップなイメージでデザインアレンジをして商品化するものも多く、男性ファンだけでなく女性ファンも徐々に増えつつある状況になっています。
各企業もその影響力に古くから着目しており、1983年当時はパナソニックがキャラクターをCMに起用。その後も、トヨタやグリコなどもコラボレーションを行っています。中でも、1999年の新3部作スタート時には、ペプシがボトルキャップフィギュアを付けるキャンペーンを展開したところ、コレクションがブームとなり、社会現象として取り上げられることもありました。
その他、アディダスやユニクロ、エドウィンなど衣料メーカーとの馴染みも良く、企業コラボアイテムを多数出して人気を獲得しています。
こうした過去の実績から見ても、12月に新作が公開されるタイミングに向けて『スター・ウォーズ』の新たなブームが来ることが予想されます。
事実、GW中の『スター・ウォーズ展』は大盛況であり、入場に6時間待ちという日もあり、平日でも多くのファンが詰めかけている状況です。
『スター・ウォーズ展』はこうしたこれまでの作品の流れや世界観の魅力を新たに触れるという入門編としてよくできており、展覧会に足を運ぶことで『スター・ウォーズ』の魅力を知ってみるのもいいでしょう。
キャンペーン担当者はこの新しいブームを見逃さず、『スター・ウォーズ』とのタイアップを検討してはいかがでしょうか?
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スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン。
日程:4月29日(水・祝)~6月28日(日)
会場:六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー内 スカイギャラリー
http://www.roppongihills.com/tcv/jp/sw-visions/
© & TM Lucasfilm Ltd.
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取材・文:石井 誠
フリーライター&編集者。アニメ、ホビー(模型&フィギュア)、アメコミ、ミリタリー、特撮、映画など趣味性の高いコンテンツやグッズ展開などを含めたメディアミックス関連の取材や執筆を行う。「Febri」、「オトナアニメ」、「月刊Newtype」の雑誌媒体の他、ウェブコンテンツやオフィシャルムック、映画パンフレットなど、多数の媒体を手掛けている。