はるばるきたぜアヌシー!
「アヌシー国際アニメーション映画祭」その名前を聞いたことがある方は多いと思います。ただそれはTVアニメ業界の方にはあまり関係のない、遠い国で行われるイベントだろうという程度の認識がほとんどかと思うのです。
アヌシー国際アニメーション映画祭(以下、アヌシー映画祭)は元々はカンヌ映画祭のアニメ部門であったのですが、その後独立して現在の映画祭へとスケールアップし、今や世界最大のアニメーション映画祭となりました。
去る6/11から6日間の日程で行われた映画祭の期間中、アヌシーの街中では、朝から晩まで大小の上映会が行われるのはもちろん、世界中のアニメ作家が自身の企画とともにピッチと呼ばれる制作支援のためのプレゼンを行ったり、地域に特化したピッチやカンファレンス、普段は直接話す機会のない有名スタジオを招いたセミナー形式のミーティングなどが行なわれています。
ガリガリの特派員である筆者は今回、特にその中でも映画祭と双璧をなすMIFA(ミーファ)と呼ばれる見本市および今年で3度目(注:公式サイトによる)の出展となる東京都ブースのピッチを体験してきたので、こちらの紙面で紹介したいと思います。
そもそも、MIFAとは?
アヌシー映画祭では映画祭と並行して行われる各国アニメビジネスの事業マッチングの場が用意されており、それが”MIFA”と呼ばれる見本市となります。
MIFAの意味ですがイベントの公式ページには記述が見つからないので、念のため説明させていただくとフランス語のMarché international du film d’animation d’Annecy(=アヌシーアニメーション見本市)の頭文字をとってMIFAと呼ばれています。
以下、MIFA東京都ブース公式サイトからの引用になりますが、世界中のアニメビジネス関係各社が一堂に会し、作品の売買、投資、共同製作など様々なアニメーションビジネスの機会創出に寄与している世界最大の見本市。(引用:https://anime-tokyo.com/mifa/#works-2018 )というものがこのMIFAなのであります!
いざMIFA会場へ
Bonlieuセンターとよばれる旧市街のイベントホールから、湖畔沿いに15分ほど歩くととても雰囲気のよい、クラシカルなお城が見えてきます。こちらがアヌシー映画祭と同時に開催されているMIFAのメイン会場インペリアルパレス(L’Impérial Palace)です。
建物のサイドに設置された入り口からまずは厳重な荷物検査を通り、レセプションでバッジを登録すると、ずっしりとした資料一式とカバン(ブルー、グリーン、パープル)がもれなくもらえます。
1日目はこの大量の資料を持って歩くことになるのですが、2日目からはMIFA会場の案内図と、各種カンファレンスのタイムスケジュールがあればまずはMIFAのみを回るには十分です。
会場内に入ると、あらゆるアニメ制作に携わるデジタルツールやメーカー、VRメディアのブースなどが文字通り、世界中から一堂に会していて、しばし圧倒されます。
今年は6/12〜15まで開催されたMIFA会場では、朝から夕方までさまざまな商談や打合せ、プロデューサーたちによる挨拶回り、名刺交換などが行われ、まさにグローバルなスケールでアニメ業界の親睦が深まっていきます。
筆者が見渡したところ、「え?この国にもアニメ制作会社が!」と正直驚いた国々もあります。アフリカのジンバブエ、セネガル、中南米のボリビア、エクアドル、ペルー(ブース大!)などが堂々とブースを構えていました。東南アジアからもフィリピンが大きなブースを出展しており、来年はさらに増えると予想されます。また、期間も後半になると、すっかり仲良くなった各国のスタッフ同士、夕方5時ぐらいから集まって酒宴が始まっていました。
ミーティングアポもひっきりなしで大盛況の東京ブース
今回集中取材させていただいたMIFA東京都ブースには、合同会社ゼリコ・フィルム「アラーニェの虫籠」、合同会社Tomovies「水の大地‐Water Ground‐」、株式会社ヌールエ「のら猫クロッチ」、Volca株式会社「ボーカルボルカちゃん」トワフロ合同会社「クラユカバ」の5社のブースが、東京代表として出展しておりどのブースも分刻みのスケジュールで世界中のバイヤーやパートナー、制作会社から就活中の学生までひっきりなしにミーティングが行われました。
また各ブースにはヨーロッパ中から多くの就活中の学生たちが、日本のクリエイターと一緒に仕事をするにはどうすればよいのか質問しに来たり、タブレットを片手に自身の作品をアピールしに来ていました。
MIFA出展者を支える東京ブースのスタッフたち
「熱を出している赤ん坊と妻を置いて出てきてしまった」と後ろ髪を引かれながらも一生懸命作品の説明に終始していた某プロデューサーや、「東京に戻ったら編集とダビング作業が待っている」とため息をつきながらもアヌシーでの滞在を心から楽しんでいる某監督など、同じ目的で協力しあい衣食住をともにしながら、すっかり繋がりが深まった様子の東京チーム。
そして東京から来たスタッフはもちろん、通訳やコーディネーターの方まで各作品の制作費用の調達や商機の創出のため全力をつくして、打ち合わせと調整にあたっている姿を目の当たりにし、本当に感動。わざわざ来た甲斐があった。
改めて東京代表の出展者の紹介です。
・合同会社ゼリコ・フィルム 『アラーニェの虫籠』
・合同会社Tomovies 『水の大地‐Water Ground‐』
・Twi-flo合同会社 『クラユカバ』
・株式会社ヌールエ 『のら猫クロッチ』
・Volca株式会社 『ボーカルボルカちゃん』
日本が生み出す”ANIME”の市場価値はまだまだ追い風
また、今回東京ブースに訪れるパートナー候補企業や学生の反応を見ていて感じたことですが、日本の”ANIME”は世界中の作品と比較した時に本当に特別なジャンルであり、日本以外で同等のクオリティのアニメを作っている国は今のところ見当たらないように感じました。
ただアヌシーでの上映会やMIFA会場でのピッチ企画などを見渡せば、日本の漫画に影響された作家はたくさん出てきているので、今後はどうなるかわからない状況です。今秋O.Aされる「ラディアン」の原作者トニー・ヴァレント氏など、フランスの漫画家やアニメ作家、学生の日本アニメへの情熱は特別に熱いものを感じました。誤解を恐れずに言わせてもらいますが、次の宮崎駿はフランスあたりから生まれるかもしれないという雰囲気があります。
「TOKYOフォーカス」ピッチ会場に潜入
6/14。いよいよ東京ブースの出展者には緊張の時である、「TOKYO フォーカス」と呼ばれるピッチセッションが、絢爛なインペリアルパレスの5階ホールで行われました。
ちなみに、「ピッチ(PITCH)」という日本ではあまり聞きなれない用語ですが、自身の企画を出資者や関係者へ向けてプレゼンテーションすることを英語ではピッチと言います。
ピッチは基本英語で行われます。それぞれの企画をプロデューサーや監督が一人10分ほどを使い企画の趣旨やストーリー、登場キャラクターなどを英語で紹介します。
今年のTOKYOフォーカスでは、5名のプロデューサー/監督が壇上に立ちピッチをしました。
それぞれのピッチの詳しい内容は下記に公式サイトなどのリンクをご紹介いたしますが、筆者もアヌシーで初めて体験したピッチ会場で、手に汗を握ってひとりひとりのプレゼンを見守りましたが、東京代表の面々の堂々たるスピーチに、最後にはとても胸が打たれました。
後からうかがったところ、東京都の支援により事前に入念なリハーサルや指導が行われたとのことで、まさに東京チーム全体で最善を尽くして取り組んできていたのでした。
ジャパンレセプション at チルアウトエリア
ピッチに続けて夕方からは、ジャパンレセプション(日本主催の懇親会)に潜入してみました。
MIFA会場の端に設置された、「チルアウトエリア」という湖畔にせり出したコテージがとても気持ちの良いカフェテリアにて行われたこのレセプションパーティでは、日本からアヌシーに来て、それぞれの立場でのピッチや記者会見を終えた各クリエイターたちの自己紹介があり、さらには、「ピッグ 丘の上のダム・キーパー」(トンコハウス)のエリック・オー監督(テレビ映画部門のグランプリ受賞!)のスピーチ、ポリゴン・ピクチュアズ代表である塩田周三氏の総括的なスピーチがありました。
その後は歓談タイムとなり、ここでもさまざまな国からプロデューサーやバイヤー、学生などが大勢集まり、日本とのビジネスや協業、雇用の可能性まであちこちで盛り上がっていました。
MIFA出展のメリット
ここで今回、東京都のANIME TOKYOブースにて出展された出展者の一部の方々からのメッセージをお届けします。
Volca株式会社「ボーカルボルカちゃん」
Q. 今回のMIFAにANIME TOKYOブースとして出展してみて良かったことをお願いします!
A. 今回、MIFAに出展してみて良かったことは出展前から東京都様の様々なサポートを受けれたことが一つ挙げられます。
例えばMIFA参加決定前は、“通年のセミナーで海外コンテンツビジネスの仕組み”の基礎を学ぶ事ができました。MIFA参加決定直後ですと、“バイブルと言われる交渉に絶対必要な資料の作成サポート“に加えて“英語のピッチのトレーニング”までして頂いた事でした。
MIFA参加中に関しましては、“約50社にも及ぶ商談先のアポイントメント確保”“MIFA開催期間中の通訳のフルサポート”、“渡航費・宿泊費の援助”などの支援をして頂いた事です。どれも、中小企業単体ではハードルが高い内容でしたので、これらのサポートは本当に有難かったです。
また、MIFAに出展して一番良かった事は、“コンテンツとビジネスの中身が良ければ、例え小さな会社が作ったオリジナル企画でも、きちんと商談のテーブルにつける事”を理解できた事でした。 参加前は日本の小さな会社で作ったものが、海外で相手にして貰えるかは正直不安でしたが、実際に参加してそれは杞憂だと分かりました。求められるハードルの高さは別途、問題としてはあるのですが、そもそもの前提条件は非常にフラットであり、中身の勝負であるという事をとても嬉しく思いました。
Volca株式会社とは?
弊社はUntiyやUE4などのリアルタイムエンジンを使って、より早く効率的に映像を作る事を得意としている会社です。2018年5月に行われたUniteTokyo2018では、中国版と日本版のショートストーリーをUnityを使って同時制作する取り組みを行い好評を頂きました。またMIFA出展作となったVocalVolcaのような子ども向け番組も得意としています。
制作協力も行っておりますので、ご興味ありましたら弊社までお気軽にご相談下さい!
https://www.volca.tokyo/
合同会社Tomovies「水の大地‐Water Ground‐」
Q. 今回のMIFAにANIME TOKYOブースとして出展してみて良かったことをお願いします!
A. MIFA出展のメリットは貴重な国際見本市への参加経験が得られること、国外に取引先(共同制作、出資会社、外注先)が増えること、自社の強みと課題を再認識出来ることです。
東京都のサポート面では50件以上にも及ぶMTGのアポ取り代行が大変助かりました。また、期間後の取引先へのフォローアップを1年間に渡ってサポートしてもらえるのがありがたいです。海外との協業には継続的な自主活動が必要なので、他の見本市のご案内や具体的な取引への段取りを相談できるのは非常に助かります。
合同会社Tomoviesとは?
・Tomovies制作、高嶋が監督を務めるTVアニメ「働くお兄さん!の2!」好評放送中!
TOKYO MX:毎週金曜21:54~ BSフジ:毎週月曜23:55~
・映画「影鰐Live上映2.8猿楽ナイトツアー」が6月30日より一週間限定で上映。アニメ
と演劇、4DXを融合させた新感覚のホラー作品で大好評のうちに終了しました。 期間中は毎日演出が変化、北海道や沖縄からの遠征グループ、全日参加のリピーターなど熱狂的なファンが続出。地方、国外での上映を熱望する声も多数頂いております。
トワフロ合同会社「クラユカバ」
Q. 今回のMIFAにANIME TOKYOブースとして出展してみて良かったことをお願いします!
A. これは本当に沢山ありますね。まずはMIFA出展自体から得られるものは、海外での自社作品のアピール方法、日本のアニメ作品が海外でどのような評価を受けているのか、国際市場におけるビジネスのルール、海外の人脈構築などです。こういった国際感覚はネット情報だけではなかなか体感しづらく、実際に行ってみないことには得られないものだと思います。もちろんアヌシーの美しい景色や美味しい食事、人々の温かさもそうですね。
そして今回は東京都様の手厚いサポートの元での充実した出展になりました。出展中のみならず、出展の半年以上前から海外展開で必要になる「ピッチ」「バイブル」「商慣習」などの知識を得るためのセミナーを開いて頂き、出展決定後はMIFA出展に必要な提出書類のサポートや、その他相当に時間が取られるであろう出展にまつわる様々なタスクを根気よくサポートして頂きました。このような後押しがないと小さい会社では恐らく出展に至ることはかなり難しいと感じました。
またもちろん現地では英語でのミーティングやピッチになりますので、英語でのサポートも万全で何も問題がありませんでしたし、事前に商談のアポイントともセッティングして頂き、商談に集中できる環境を作って頂きました。
このような形で参加することができて大変光栄でした。
トワフロ合同会社とは?
トワフロ合同会社は、日本の作画アニメのもつ良さを活かしつつ、新しいメディアやプラットフォームへのクリエイティブにチャレンジしていく会社です。今回MIFAに出展した「クラユカバ」という作品では同じ作品において「作画アニメ映像」と「VRコンテンツ」の両方を同時に制作しております。
その他、短編アニメーション、アニメーションCM,PV、MV制作、SNS用映像制作、キャラクター制作、VRコンテンツ制作など、様々な出口に対しての企画、制作が可能です。
http://twiflo.com