11月27日、東京・お台場でフジテレビによる深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」のプロジェクト発表会が行われました。
「ノイタミナ」とは、「Animation(アニメーション)」を逆さ読みした造語で、2005年4月にスタートしたフジテレビ系列の深夜アニメ枠の名称。「アニメの常識を覆したい」「すべての人にアニメを見てもらいたい」という趣旨のもと、“アニメオタク”に収まらない幅広い層に向けたラインアップが特徴で、『ハチミツとクローバー』『のだめカンタービレ』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などのヒット作を次々と生み出してきました。
その一方で、文芸作品のアニメ化やアート系の映像表現、実写ドラマ・映画との連動など、“アニメ”が持つ可能性を拡げる意欲的なチャレンジを続けており、その動向には世界中のアニメファンから注目が集まっています。
そんな「ノイタミナ」の記念すべき10周年の発表会とあり、会場には数多くのファンと報道陣が詰めかけました。映画館に設けられたステージにはレッドカーペットが敷かれ、メインMCの吉田尚記さん(ニッポン放送アナウンサー)も普段とは違うフォーマルな装い。10周年にふさわしく、相当に気合いの入った雰囲気で行われた発表会でしたが、その中身はさらに気合満点。事前の予想をさらに上回る野心的なプロジェクトが次々と発表されました。
■全員主役級!ノイタミナの“今”を支える豪華声優陣がずらり
会見には、現在放送中の音楽アニメ『四月は君の嘘』から梶裕貴と早見沙織、そして来年1月には劇場版が公開される『PSYCHO-PASS サイコパス』から花澤香菜と櫻井孝宏(シークレットゲスト)と、いずれも主役級の声優たちがずらりと登場。きらびやかな衣装に身を包んだトップ声優がステージに上がるたびに、会場に詰めかけたファンから大きな歓声が上がっていました。
そんな華やかなスターに混じって意外な健闘を見せたのが冬アニメ『冴えない彼女の育てかた』に出演する大西沙織、安野希世乃の新人コンビ。他の登壇者にくらべて経験の浅い新人声優ながら、「最初に原作を読みはじめたときには『四月は君の嘘』さんに負けない、キラキラした青春ラブコメディだと思っていたんですが……」など、随所で笑いを取りながら作品をアピール。今後の活躍を期待させるアグレッシブな姿勢が印象に残りました。
■Project Itoh第3弾 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』が劇場アニメ化
そしてこの日、報道陣を一番沸かせたのがこちらの発表でした。SF界隈でカルト的な人気を誇る夭折の作家・伊藤計劃の映画化プロジェクト「Project Itoh」の第3弾として、伊藤が生前わずか30ページだけ書き残した小説を、彼の盟友である芥川賞受賞作家・円城塔が引き継いだ異色の長編『屍者の帝国』の映画化が発表されました。制作は、『進撃の巨人』などで知られるWIT STUDIOが手掛けます。
さらに、すでに映画化が発表されていた伊藤計劃原作映画『虐殺器官』と『ハーモニー』のスタッフ陣も公開。クラヴィス・シェパード大尉率いる特殊暗殺部隊の活躍を描く『虐殺器官』は、2006年『Ergo Proxy』で国内外から高い評価を受けた村瀬修功監督とマングローブのタッグ。高度に医療が発達したディストピア社会を描く第30回日本SF大賞受賞作『ハーモニー』は、『AKIRA』の作画監督として知られるなかむらたかしと、『鉄コン筋クリート』のマイケル・アリアスの2監督体制。制作は『鉄コン筋クリート』『ベルセルク』のSTUDIO 4℃が担当します。
3作品すべてのキャラクターデザインは、supercellやlivetuneとのコラボレーションで話題となったイラストレーターredjuice氏。ジャパニメーションを代表する才能が結集し、ノイタミナがこの“計劃”に賭ける意気込みが伝わってくる重厚な陣容となりました。
■来年からテレビ放送枠縮小。5年ぶりに30分1枠へ戻る
2015年には、Project Itohの3作品に加え、『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』など大作映画が次々と上映される一方、テレビアニメの枠は5年ぶりに縮小。これまで1時間の枠に30分アニメ2作品を放送してきましたが、2015年4月より30分1枠となります。これまでジャンルにこだわらず幅広い原作を映像化してきたノイタミナだけに、作品数の半減はアニメファンにとって悲しいニュースとなりました。
■2015年度の4タイトル発表!異色のパンチラアニメも?
そんな中、2015年度のノイタミナで放送される全4作品が発表。今年没後50年を迎えた文豪・江戸川乱歩原案の『乱歩奇譚 Game of Laplace』、現在フジテレビ系で放送中のドラマが大好評な森博嗣原作ミステリー『すべてがFになる』、そして『進撃の巨人』の荒木哲郎監督×WIT STUDIOコンビが手掛ける完全新作『甲鉄城のカバネリ』と硬派な作品が並ぶ中、ひときわ異彩を放っていたのが来年4月より放送されるオリジナルアニメ『パンチライン』でした。
「パンツを見たら、人類滅亡」というナンセンスな世界観やセクシーなキャラ絵を見る限り、お馴染みの萌えアニメのようにも見えますが、スタッフ陣がとにかく異色。脚本は伝説のアドベンチャーゲーム『Ever17』のシナリオライター・打越鋼太郎。スタジオは現在『神撃のバハムート GENESIS』で圧倒的なクオリティーを見せつけているMAPPA。そして音楽は、言わずと知れた小室哲哉! ひと癖もふた癖もある面々が揃うだけに、この“パンチラアニメ”が一体どう化けるのか注目です。
■『進撃の巨人』荒木哲郎監督がノイタミナ凱旋。新鋭WIT STUDIOが大活躍
今回の発表会でひときわ注目を集めたのが、『屍者の帝国』『甲鉄城のカバネリ』と、大注目2タイトルの制作を担当するWIT STUDIOの存在。2012年に設立し、翌年『進撃の巨人』で鮮烈なデビューを果たした新進気鋭のスタジオが来年も大きな存在感を見せそうです。
また、2012年『ギルティクラウン』で活躍した荒木哲郎監督が、『甲鉄城のカバネリ』でノイタミナに3年ぶりに復帰。今回は完全オリジナル作品ということで、大ヒット作『進撃の巨人』と同じWIT STUDIOとのコンビでどのような映像を作り上げるのか、凱旋作への期待が高まります。
■「あの花」スタッフによる新作劇場アニメ制作。タイトルは12/3秩父夜祭で発表
会見も終わりに近づいたとき、「ONE MORE THING」とばかりに発表されたのが、いまやノイタミナの看板作品となった『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のスタッフによる新作劇場アニメ。タイトルはまだ発表されていませんが、『あの花』と同じ埼玉県・秩父を舞台にした「青春群像劇第2弾」と銘打つだけに、ファンにとっては見逃せない一作になりそうです。気になる作品タイトルは12月3日の秩父夜祭で発表されます。
2005年4月の『ハチミツとクローバー』以来、アクション、恋愛、ホラー、スポーツと、ジャンルにとらわれない名作・挑戦作を次々発表してきたノイタミナ。10周年を迎える来年は、放送枠こそ縮小するものの、映画・テレビともにさらに意欲的なラインアップとなっており、今後も日本のアニメ業界を牽引していく、という決意に満ちた発表会となりました。
ノイタミナ公式サイト
http://noitamina.tv/lineup/2015