2015年3月20日(金)から22日(日)まで、東京ビッグサイトにて日本最大のアニメイベント「AnimeJapan2015」が開催される。昨年からスタートしたこのイベントはファミリーからアニメのコアユーザー、ビジネス関係者を合わせ11万人以上を動員し、初年度目標の10万人を上回る上々の滑り出しを見せた。プロデューサーのひとりである高橋祐馬氏(アニプレックス)に話をうかがいつつ、開催2年目の今年の見どころをビジネス観点で見ていこう。
アニメイベントというと多くはエンドユーザー向けと見る方も多いかもしれない。もちろん、春休み期間という開催時期は4月の新番組シーズンに向けて各社が力を入れてプロモーションする絶好の機会であるのは間違いない。しかし初年度に掲げたスローガンである「アニメのすべてがここにある」は、単なるアピールではない。昨年は脚本家やキャラクターデザイナーを招いたワークショップや、業界の若手から重鎮までを招いたさまざまなセミナーなどを行なった。さらには大ヒットタイトルを例に挙げ、企画から商品化までを通貫したアニメのワークフローの展示をするコーナーまである。アニメのビジネスに関わるには、制作のスケジュール感を含めたある程度の工程理解が必要になってくるため、こうした形で資料が開示される機会は貴重なものといえる。
今年は3日間開催で、メインエリア(東展示棟 東1~6ホール)と商談向けのビジネスエリア(会議棟1Fレセプションホール)がそれぞれ用意され、真ん中の21日は両方が開かれる。これはファンがどんな作品で盛り上がっているのかの熱気を実際に感じつつビジネスを進めてほしいという主催者側の思いが込められている。ビジネスエリアをセパレートすることで商談に集中できる環境づくりとユーザーの反応を見ることの両立が図られたのが今年の改善点だ。
「会場で盛り上がっている作品をご覧になって、そのコンテンツホルダーと商談が出来る。楽しいだけでない、開催の先のビジネスも見据えたイベントなんです」と、高橋氏は語る。
アニメのビジネスは従来の玩具やビデオソフト、音楽に閉じているわけでは決してない。そのさまざまな事例をアニメ業界側から発信したのが昨年も行なわれた「コラボレーションショーケース」。今年は「アニメ×47都道府県 コラボレーション」と題した展示が行なわれる。近年の地域活性の代表例である『ガールズ&パンツァー』と大洗町(茨城県)や、縁のある地の民芸品とアニメがコラボしたグッズ展示など、日本全国のアニメ事例が一堂に会し、アニメと異業種とのコラボレーションビジネスの可能性や具体的な方法を提案する。
「アニメ×伝統工芸」と題した一連のシリーズでは大谷焼(徳島県)、有田焼(佐賀県)、信楽焼(滋賀県)などが作品の意匠やキャラクターを採り入れた焼き物を展示販売する。地域観光から民芸品、職人手作りの工芸品まで、アニメ作品とコラボレーションできる商品の可能性は広い。
また、アニメーション関連の業界団体である日本動画協会は「アニメビジネスパートナーズフォーラム」という異業種コラボを促進する活動を行なっており、AnimeJapanのビジネスエリアに出展して企業間の仲介を行なったり、イベント会期後の作品への問い合わせ窓口も設置予定だ。
アニメの流行サイクルはファンのニーズに合わせて早く、普段からチェックしていない場合、どれが人気なのか、なかなか把握しづらいのではという質問についてはこんな言葉をうかがえた。
「やはりトレンドというものはあります。人気作品、あるいは今後期待されている作品についてはビデオメーカーだけでなく、さまざまな会社が商品化を行なっているので、会場を回っていろいろなブースで見かける作品は注目作の指標になるかと思います」(高橋)。
ステージイベントには作品個別のプロモーションのほかに、「Anime+ステージ」、「セミナーステージ」がある。前者は「アニメ+音楽」(アニメ音楽フェスプロデューサー座談会)、「アニメと本」(メディアミックス作品の原作出版社座談会)といった、アニメの広がりを示すテーマで開催される。後者は海賊版対策のプレゼンテーション、配信ビジネスに関するセミナーなど、業界の取り組みを中心に展開する。これらは業界関係者だけでなく、一般ユーザーも参加できる。
「ユーザーと言いますが、日常は会社勤めをしている方も多いわけです。そこを業界関係者のみと隔ててしまっては、可能性を狭めてしまいます。最近は公共的なPRにアニメキャラを使ったり、先ほどのようなコラボも進んでいます。これらをご覧になることで新しいきっかけが生まれていけば」(高橋)
最後に今後のAnimeJapanの中期目標を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「50万人が集まるイベントにしたいですね。単純に人が多いと楽しいですし、規模に応じたさらに良い企画を出せると思います。AnimeJapanは開催それ自体がゴールというわけではないんです。イベントはあくまで『手段』。ファンに新しいエンターテイメントを提供したり、ビジネスを推進したり、作り手に還元できる環境を作るという目的は変わりません。より面白い器を目指していけたら」(高橋)
日本のアニメは多種多様なタイトルによって世界的に多くのファンを獲得している側面が大きく、そうした新作発表に10万人規模のファンが集い、マーケティングの場としてもAnimeJapanは貴重な見本市だ。さらに各種ビジネスセミナーなどを通じて業界俯瞰まで行なえるため、アニメのビジネスに関わる者にとって欠かすことのできないイベント。これからアニメのビジネスに関わる人にとっても、ユーザーの動向やビジネスを知ることができる大きな機会だ。まずは足を運ぶことがビジネスのスタートや新しい商品開発に繋がることだろう。
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■AnimeJapan 2015 開催概要
会場:東京ビッグサイト
東展示棟 東1~6ホール [メインエリア]
会議棟1Fレセプションホール [ビジネスエリア]
メインエリア会期:2015年3月21日(土)・22日(日)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30
ビジネスエリア会期:2015年3月20日(金)・21日(土)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30
公式サイト http://www.anime-japan.jp/
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インタビュー・構成:日詰明嘉
フリーライター。アニメーション記事を中心に執筆。監督やプロデューサー、作画・3DCG、声優・音楽ライブなどアニメ製作に関わる全般を取材する。主な執筆媒体は「オトナアニメ」、「月刊Newtype」、「リスアニ!」、「声優グランプリ」などの雑誌のほか、オフィシャルムックやパンフレットなど多数。