今年の夏も熱かった!北米最大「Anime Expo2016」現地レポート‼︎

2016.07.05

 今年もロサンゼルス・コンベンションセンターの広大な敷地を使って開催された巨大アニメイベントAnime Expo。ブースあり、コスプレショーあり、物販あり、体験イベントあり、北米のアニメ・漫画ファンが一年のうちにもっとも興奮する四日間だ。ガリガリ編集部は各ホールをまわり徹底取材。イベントに出展する企業イベントを中心にレポートする。

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雲ひとつないロサンゼルスの青空。入場まで長蛇の列だが、ものともしないファンたち。

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連日北米中からアニメファンが集結し、かなりの人口密度となる。広大な敷地が手狭に感じるのだから、その熱量は相当なものといえるだろう。

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コンベンションセンターの見取り図。これでも大分簡略化されており、各社のブースやイベントが展開されるホールの情報がさらに加わると、会場は一種の迷路と化す。

 

 まずは国内企業の出展に関する情報から。メインホールであるEXHIBIT HALLでまず眼に入るのはやはりアニメ関連のブースだ、アニプレックスや東映アニメーション、ポニーキャニオンといった企業ブースでは自社の抱えるアニメタイトルのプロモーションとそのグッズの販売の2つを主軸にブースが構成されている。イベント二日目ともなると売り切れの商品も多数出てくるほどの盛況ぶりだ。またホール入口にブースを構える動画配信プラットフォームDAISUKIのブースには、多くのファンが押し寄せていた。昨年に引き続き今年もAnime Expoで一番目が行くであろう入口上の大型広告枠を押さえていることからも気合の入り方を感じる。後述するが、海外における映像配信プラットフォームである、クランチロールやHuluもAnime Expoの公式スポンサーとなっており、動画配信サービス各社の力の入れようが伝わってくる。

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アニプレックスブースでは物販の他に『ソードアート・オンライン』『青の祓魔師』『四月は君の嘘』などの原画が展示されていた。気軽に撮影OKな点はアメリカのイベントならでは。

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東映アニメーションでは『ワンピース』や『ドラゴンボール』といった北米の人気作品を全面に出しつつ、“マンガ肉”的なグッズもスタッフがプッシュしていた。

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等身大ポップと提灯という目立つブースのポニーキャニオン。『響け!ユーフォニアム』のキャラクターの前で、そのコスプレをしたファンたちが代わる代わる撮影会をしていたのが印象的。

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ホール入ってすぐの位置にブースを構えたDAISUKI。日本国内でも放送を開始したばかりの『ラブライブ!サンシャイン』を早速推して、ファン獲得に努めていた。

 

 ゲーム会社の出展もアニメと同様目立った。ATLUSは『ペルソナ5』のロゴを入場者パスすべてにつける形で来場者へのアピールを行っていた。バンダイナムコエンタテイメントはEXHIBIT HALLの一等地にブースを構えつつ、もう一つのホールであるENTERTAINMENT HALLに大きなゲーム試遊スペースとステージを設け存在感を示した。
 美少女ゲームメーカーとしては、ヴィジュアルアーツとフロントウィングが、ブースが向かい合う形で出展した。昨年から、クラウドファウンディングの英語版制作プロジェクトで海外のファンから熱い視線を集めていることもあり、安定的にファンが訪れていた様子だ。
 スマホゲームメーカーからはgumiが精力的な出展を行い、日本でも人気の『ファントムオブキル』の大型ステージを展開、VRゲームなどをフックに多くの参加者から注目を集めていた。二日目にはコラボを行っているアーティスト・でんぱ組.incのフリーライブも行われ、力の入れようが伺える。今回のAnime Expo出展がファン獲得に繋がるようであれば、日本のスマホゲーム業界にとって北米進出のモデルケースとなりうるだろう。

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すべてのパスについてくるP5(『ペルソナ5』)のマークは、4日間、参加者の目に最も触れたアイコンの一つだろう。ブース自体はゲームの試遊台をメインに構成。

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『ドラゴンボール』や『ジョジョの奇妙な冒険』など人気の高いタイトルとともに、エントランスホールには圧倒的な存在感を示す『ゴッドイーター』の展示でバンダイナムコエンタテイメントは注目を集めていた。

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「萌え」という価値観が万国共通であることを実証するかのように、ヴィジュアルアーツとフロントウィングのブースに、ファンが途切れず訪れていた。

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今回出展に最も力を入れた企業の一つがgumi。「Anime Expo」出展はスマホゲーム北米進出のひとつのモデルケースになるだろう。

 

 次にホビー系の企業だ。フィギュアメーカーであるグッドスマイルカンパニー、壽屋、ホビージャパン、ボークス、メガハウス、とそれぞれ出店し、ともに賑わいを見せた。速報記事でも伝えたとおり、特にグッドスマイルカンパニーは初日にホール外まで続く長蛇の列が出来、二日目が終わる頃には約半数の商品が完売となっていた。カードゲームのブシロードはブースの大半をプレイスペースに割き、ファンたちが熱心にカードバトルを繰り広げていた。

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『カードキャプターさくら』や『ゼルダの伝説』など、北米のファンのツボを的確に押さえた展示が印象的なグッドスマイルカンパニー。さらに新たな試みとして、アニメ『キルラキル』の実際の動画を一枚20ドルで販売を始めた。

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壽屋ブース

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ホビージャパンブース

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ボークスブース

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メガハウスブース

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ブシロードブース

 

 場所をEXHIBIT HALLからENTERTAINMENT HALLに移すと、さらに多様な企業がAnime Expoに参加していることがわかる。グッドスマイルレーシングを中心とした痛車展示ブースや、今回唯一アニメスタジオとして単独で参加したP.A. WORKS、さらにパチンコブースに、プリクラブースと日本のエンタメの幅の広さを示すようなラインナップとなっている。

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充実した出展内容のグッドスマイルレーシングと、クオリティでは負けるとも劣らない有志による痛車の数々は、さながら日本の痛車イベントのよう。

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スタジオ自らの出展ということもあり、非常にボリュームのある内容となったP.A. WORKSブース。その展示されている資料の量に、ファンも満足の様子だった。ファンからのメッセージは収まることを知らず、アニメスタジオとして海外のファンからもしっかりと認知されていることが伺える。

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外国のファンが、コスプレをしたままパチンコをするという中々レアな光景を目にすることが出来たパチンコブース。まずはコンテンツからファンにアピールしていくということだろうか、人気の高いコードギアスの台をポスター等でプッシュしていた。

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現地のファンたちもプリクラに興味津津。

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リアル脱出ゲームで有名なSCRAPも出店しており、Anime Expo会場とリトルトーキョーを舞台とした脱出ゲームを展開していた。リトルトーキョーにSCRAPの支社もあるとのことで、すでにグローバルな展開をしていることに驚きだ。

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一般企業としてユニクロも一角にブースを構え、クーポンサンプリングを行いファンにアピール。

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盛り上がりを見せていたゲームコーナー、その中でも存在感があったのがバンダイナムコエンタテイメントだ。試遊台を置くだけではなく大きなステージを用意、対戦ゲームを実況付きで放送し、多くのファンにアピールしていた。

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日本のイベントではあまり見かけることのない、ひたすら参加者がゲームを楽しむスペース。基本的に用意されているのは対戦ゲームで、スマッシュブラザーズやポッ拳など格闘ゲームのほか、FPSなどいわゆる洋ゲーも多く見受けられた。

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ENTERTAINMENT HALLの約半分を占めていたのがコスプレイヤーのための撮影コーナーだ。非常に凝った特設ブースが用意され、集まったコスプレイヤーたちがそれぞれのシーンに合わせたポーズを取って、楽しんでいた。家族そろってコスプレする姿も。

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ファンが自身のアニメ愛を書くスペースもかなり大きく設けられていた。みなさんお上手。

 

 一方で現地企業の出展についてだが、大きな存在感を示したのは、アニメの動画配信プラットフォーム「Crunchyroll」だ。日本ではあまり見かけないナップサック型のノベルティ袋を背負ったファンは会場中のどこにいても目に入った。その他に北米圏でアニメのライセンシーとして活躍する「FUNimation」「sentai filmworks」なども日本の企業同様大きくブースを構え、それぞれの抱えるアニメタイトルのビジュアルを大きく展開しファンへのアピール材料としていた。

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大きな存在感を示していたのがCrunchrollだ。『キズナイーバー』や『Re:ゼロ』など、日本でも最新のタイトルのグッズを展開しファンへアプローチ。

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とりわけ目立ったのが、このナップサックだ。参加者10人中1〜2人は持っているような肌感だ。イベント期間中、一番目にした企業ロゴはこのCrunchrollだった

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FUNimationでは販売するメインの商品はグッズではなくディスクだ。日本での価格を考えると驚くほどリーズナブルだ。とはいえ動画配信が人気の昨今、ファンとしてはアニメを配信で手軽かつ低料金で楽しむか、ある程度の金額はかかるがコレクション欲を満たせるディスクで楽しむかは悩ましい選択だろう。

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sentai filmworksは『モンスター娘がいる日常』『干妹うまるちゃん』『No Game, No Life』など北米で人気のタイトルのグッズが目立った。特に『モンスター娘がいる日常』に関しては、sentai以外のブースでもよく目にし、原作者の漫画家オカヤド氏がAnime Expoにも参加するなど、とりわけ熱いコンテンツとなっている。

 

 物販に関してはバンダイの正規代理店である「Bluefin」がガンプラを大々的に取り上げ、ファンから注目を集めていた。ただEXHEBIT HALLの半数以上を占めるのは中小規模の販売店だ。売っているものは様々で、上記のように正規な商品の代理店もあれば、日本で流通している商品の並行輸入であったり、タペストリーやTシャツなどの刷り物系であったり、ぬいぐるみやジョークグッズ的な商品群まで、探せばアニメグッズといわれるおおよその商品は手に入るのではないかと思う。ただ二次創作のイラストを使用した商品や、公式のイラストを使用しているもののクオリティ的には?マークが付く商品などが一部あったことも事実だ。

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Bluefinブース

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 出展ブース全体の雑感としては、原則コンテンツに絡んだ出展がほぼすべてを占めており、一般企業の出展はほとんど見受けられなかった。同時期に開催されるフランス・パリのJapan Expoがアニメ・漫画のみならず伝統工芸、和食など日本文化全般を取り扱う方向に進化したことを考えると対照的と言える。
 日本から多数の業界関係者を招いて開催されたワークショップもAnime Expoの特徴と言えるだろう。あまりにも多くのイベントが同時間帯に展開されるため、把握することすら一苦労するレベルである。ワークショップを実施するのであれば企業は事前告知に力を入れたほうがいいだろう。
 また真夜中までイベントが行われているものAnime Expoの特色だ。もうひとつは飲食系の出展がほぼないことだ。会場となるコンベンションセンターとの契約上の制限のようだが、『食戟のソーマ』など食をテーマにしたタイトルの知名度もあるため、なにかしらコンテンツに紐づく形で飲食系の展開があってもいいかもしれない。あるいは会場外には多数のフードトラックが出店しており、こちらを活用するのもあり得るかもしれない。
 イベント名にアニメと冠している以上、ファンが期待することはコンテンツがメインであろうが、今後規模が拡大していくにあたり、これらの点がどのような展開となるのかは注目していきたい。

 

 次にライブイベントについてだ。日本からアーティストも数多く訪れることも、Anime Expoが話題を集める大きなポイントだ。今年、特に大きく話題を呼んだのはライブイベント「ANISONG WORLD MATSURI」だ。JAM Project、T.M.Revolution、藍井エイル、OLDCODEX、スフィアなど日本のアニソンイベントの中核を担うようなアーティストが揃う豪華さは、アメリカのファンにとっても印象に残ったのではないだろうか。実際のイベントでは、コアなアニソンファンたちが集まり、大いに盛り上がった。コールアンドレスポンスなども日本でのライブと大差ないほどで、「ANISONG」の持つ力を4時間のイベントを通して強く実感した。一方で開催場所がロサンゼルス最大規模のマイクロソフトシアター(収容人数7100人)であったこともあるだろうが、席の埋まり具合は7~8割といったことろで、興行的な面で来年以降への課題は残りそうだ。

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 またAnime Expoで初公開される情報・作品も注目を集めている。『ソードアート・オンライン』の劇場版アニメの特報第一弾映像やキービジュアルの公開や、マクロスシリーズを手掛ける河森正治氏の最新アニメ作品『THE NEXT』の発表、新海誠監督最新作『君の名は。』のワールドプレミア上映など、海外において人気の高いタイトルに関する情報を公開するにあたっては最適なイベントとして、タイトルホルダーからも、ファンからも認識されていることは間違いないだろう。今後北米における情報のハブとしてもAnime Expoは重要な機能を担うことになる。

 

 最後にイベント運営に関して。4日間での延べ参加人数は30万人にも届きそうな巨大イベントであるAnime Expoだが、その運営スタッフはボランティアによって構成されている。参加しているファン同様、思い思いのコスプレをしているスタッフは会場のいたるところで見受けられた。対応も迅速かつ丁寧で、長年のイベント経験を感じさせるものだった。一方でイベントを通して感じるのは、「手作り感」だ。ブースの作りやイベント運営、スタッフと参加者の距離感などは、いわゆる商業イベントとは違い、「Anime Expoはファンと一緒に作っていくもの」であることを至るところで感じた。

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Anime Expo第一回目である1992年からの、25年間分の資料がENTERTAINMENT HALLに展示されていた。Anime Expoの歴史は、北米における日本のアニメが歩んできた歴史とも言えるのではないだろうか。

 

 国内のアニメマーケットが踊り場に差し掛かる昨今、海外におけるビジネス展開が持つ意味合いは今後確実に大きなものとなっていく。北米という巨大なマーケットにおけるファンの動向を把握するという点で、毎年参加者の規模が拡大し続けるAnime Expoをなしに語ることは難しいだろう。日本のコンテンツに関わる企業郡はもちろんだが、コラボレーションという形でコンテンツの力を借りて北米プロモーションを検討する一般企業も、この巨大イベントにおいてどのように存在感を見せ、ファンと付き合っていくのか、という点は大きなポイントとなるだろう。最終日の今日、来年の開催が現在の4日間から5日間に延長される予定であることも発表された。Anime Expoの動向から今後も目が離せない。